
それが、一番大事なことだから。
序章
祖父は、かっこいいポロシャツを着て、少し古いベンツに乗っていた。
実家の「興羽建設」を営んでいた、昔ながらの土建屋だった。昭和という時代を走り、バブルの荒波を越え、やがて事業を縮小した。それでも、子どもの私に見えていた祖父の背中は、少しも小さくなかった。
土建屋らしい焚き火を囲むと、祖父はよく餅を焼いてくれた。火のそばで待つ時間。少し古いベンツ。仕事着ではなく、どこか格好よく見えたポロシャツ。その記憶の真ん中に、いまも残っている言葉がある。
「めんどくさい」って言葉だけは、口にするな。
それが、一番大事なことだから。第一章
綺麗になる瞬間が、
ただ好きだった。
昔から、今あるものを綺麗にするのが好きだった。インターネットで流れてくるレストア動画を、つい最後まで見てしまう。実家の水回りに溜まった汚れを見つけると、どうすれば一掃できるのか考えたくなる。
新しいものを買うことより、目の前にあるものが本来の姿を取り戻していく過程に惹かれた。曇っていた金属に光が戻る。固まっていた汚れが落ちる。触れたくなかった場所が、もう一度気持ちよく使える場所に変わる。
その変化は、作業した人間にしか分からない小さな達成感で終わらない。そこを使う人の暮らしまで、ほんの少し軽くする。清掃の面白さを知った原点は、そんな単純な喜びだった。
第二章
コウハサービスから、
始まった。
フィフティーエイトには前身がある。「コウハサービス」という名前で仕事を始めた。
清掃の面白さを仕事として知り、初めて利益を出せたときは、素直に嬉しかった。自分の手と技術で価値をつくり、お客様に必要としてもらい、その結果として利益が残る。その事実は、自分が進もうとしている道を初めて肯定してくれたように感じた。
けれど、嬉しさは売上だけに向かわなかった。仕事を終えたあとのお客様の表情を見るたびに、もっと喜んでもらいたいという気持ちが増えていった。もっと綺麗にできないか。もっと安心して任せてもらえないか。説明の仕方も、道具の扱いも、立ち方や話し方も、まだ良くできるのではないか。
清掃を知るほど、清掃だけでは足りないと思うようになった。

仕事は、
手元に出る。
第三章
技術と同じくらい、
配慮が大切。
清掃は、誰にでもできる仕事のように見えるかもしれない。洗剤をつけて、擦って、流す。言葉にすれば、それだけの作業にも見える。
お客様のご自宅に伺い、大切な設備や家具に触れる仕事だからこそ、作業に入る前から気を配ることがある。
服装は整っているか。車は清潔か。持ち込む道具は汚れていないか。話し方や態度に不快感はないか。髭、歯、体臭、口臭まで、自分ではなくお客様の立場で確認できているか。約束した時間を守れるか。素材を傷つける可能性を想像し、先にリスクを伝えられるか。
そして、技術について尋ねられたときに、曖昧に逃げず説明できるか。
清掃会社が取り除くものは、目に見える汚れだけではない。知らない人を家へ入れる不安。壊されないかという心配。あとから料金が増えないかという疑い。そうした不快感や不安を一つずつ減らしていくことも、清掃の一部だと思っている。
第四章
言葉と表情から、
気持ちをくみ取る。
お客様のお話を伺いながら、私は表情にも目を向ける。
この仕事をしていると、感謝される日もあれば、事故を起こしてしまう可能性と向き合う日もある。予期せぬトラブルで到着が遅れそうになることもある。良くも悪くも、失敗した瞬間や、機械の動作が正常ではない瞬間、その場の空気は凍りつく。
逆も同じだ。質問にきちんと答えられたとき。清掃後のお手入れについて、理由まで含めて説明できたとき。作業前には硬かったお客様の表情が、自然と緩んでいく。
問題が何も起きなかったから安心するのではない。何かが起きても、この人間なら逃げずに向き合うと思ってもらえたとき、初めて生まれる安心もある。
一つずつ問題を解決し、作業を最後まで終えたあとに「頼んでよかった」「ありがとう」と言っていただける。その瞬間は、何度経験しても幸せだ。
忘れられない現場を一つ選ぶのは難しい。ありがたいことに、思い出せないほどたくさんある。なかには、ご家族と一緒に食事まで振る舞っていただいたこともある。清掃に伺ったはずが、帰るころには同じ食卓を囲んでいた。そんな日もあった。
失敗したときほど、
誠実さが見える。
第五章
都合の悪いことを、
最初に伝える。
作業中に失敗や異常が起きたら、まずお客様に状況を伝える。そのうえで責任者に確認し、必要な対応を進める。
謝るだけで終わらせず、何が起きたのか、原因は何か、これからどう対応するのかを具体的に説明する。同じことを繰り返さないために、作業手順も見直す。
売上を優先して、作業や確認を急ぎたくはない。お客様が気にしていたところを確かめ、問題があれば対応する。一つひとつの仕事を丁寧に終えることが、会社の信用につながると思っている。
問題を防ぐために教え、もし起きたときには会社として対応する。現場で得た経験やお客様からのご指摘を共有し、私たち自身も学び続けたい。
仕事の基準
崩してはいけない、
五つのこと。
- 一誠実さ
都合の悪い事実ほど、先に伝える。
- 二清潔感
服装、車、道具、自分の身なりまで整える。
- 三向上心
昨日までのやり方を、完成だと思わない。
- 四接客
作業ではなく、お客様の不安から考える。
- 五技術
理由を説明できるところまで、深く学ぶ。
第六章
採用でも、
誠実さを大切にする。
どれだけ技術が高くても、不誠実な人は採用しない。
お客様のご自宅に伺う以上、安心して仕事を任せられる人であることが大切だ。技術だけでなく、約束を守り、分からないことを確認し、事実を正確に伝えられるか。採用では、そうした姿勢を見ている。
誰にでも失敗はある。大切なのは、そのあとに事実を認め、必要な対応を行い、次の仕事に生かせることだと思う。
清潔感、向上心、接客、技術。どれも欠かせない。ただ、それらの土台に誠実さがなければ、お客様との関係は続かない。だから採用で最初に見るものも、最後まで見るものも、誠実さだ。

技術を、
人生の力へ。
第七章
ここで働く時間を、
良い人生につなげたい。
従業員には、ITやAIが当たり前になる時代にも淘汰されない人間になってほしい。清掃の技術だけでなく、接客力、説明力、問題解決力を身につけ、生涯にわたって良い人生を歩んでほしい。
正社員には、厳しいことを言う日が来るかもしれない。清掃という仕事は、技術だけ覚えれば終わる仕事ではないからだ。時間、身なり、所作、相手への配慮。自分という人間を磨かなければ、仕事の質も上がらない。
ただ、ここで過ごす時間を人生にとって良いものにする。その覚悟はある。大手洗剤メーカーや専門研修所を活用して技術を学び、できることを増やし、管理する側へ進む道もつくる。独立したい人には、独立支援制度を使って挑戦してほしい。独立は裏切りではない。育った人間が自分の足で立つことは、会社にとっても誇れることだと思う。
業務委託や協力会社とは、プロフェッショナルで清潔感のある会社同士として組みたい。一方だけが得をする関係ではなく、お互いにメリットのある提案をし、切磋琢磨できる関係をつくりたい。
第八章
興羽を数字にして、
58になった。
祖父が営んでいた興羽建設。その「興羽」を数字にすると、58になる。
前身の名前をコウハサービスとしたのも、フィフティーエイトという会社名を選んだのも、祖父の会社をそのまま受け継ぎたかったからではない。受け継ぎたかったのは、仕事に向き合う背中だった。
かっこいいポロシャツ。少し古いベンツ。焚き火で焼いてくれた餅。そして、「めんどくさい」という言葉だけは口にするなという教え。
清掃には、面倒に見える工程がいくつもある。道具を整える。養生をする。細かな部分を確認する。お客様が理解できるまで説明する。異常を報告する。終わったあとにもう一度見る。けれど、その一つひとつを省かないことが、仕事の品質になる。
58という数字の中には、祖父から受け取ったその基準と、コウハサービスで味わった最初の喜びと、これからつくる会社への覚悟が入っている。
終章
一人ひとりのお客様を、
大切に。
北九州、福岡で清掃を頼むなら、ここ。そう思っていただける会社になる。
若い会社だからこその力と前向きな空気を届けながら、品質から逃げない。顧客満足度も、従業員満足度も、99%を目指す。数字は目標だが、その手前にいるのは、いつも一人のお客様と、一人の働く人だ。
汚れを落とすだけでは、仕事は終わらない。身なり、所作、道具、説明、そして誠実さ。お客様の表情が緩むところまでが、私たちの清掃です。
フィフティーエイトは、
私にとって人生を賭けた挑戦です。
株式会社フィフティーエイト
代表 臼井 巧

